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学怪考察

 『学校の怪談』の作中で、詳細が明かされていない設定をあれこれと考察します。(何か見つければ追加します。)各項目は作中の描写を根拠に検証するので、ネタバレ要素も含みます。

 

 なお、このページの記述はあくまで管理人個人の見解なので、公式設定ではありません。

2019/10/24更新

父の転勤

 さつきの父・礼一郎は、東京から天の川町の役所の土木課に移ってきた公務員だという公式設定がある。また、公式の作品紹介によると、宮ノ下家の引っ越しは「転勤」という言葉で説明されている。さらに、3週目に放送された総集編(ソフト未収録)では礼一郎が「異勤願い」を出したとも語られていたそうだ。本当にその通りになるのだろうか。本項では、作中の通りの設定で、東京から天の川町に転勤する現実的な方法を考えたい。

 

  まず、公務員が転勤するケースを考えてみよう。例えば、礼一郎が東京で建設省(当時)に勤めていれば各都道府県の支部局への異勤は考えられるし、ちょうど平成12年(2000年)の3月から施行された「国と民間企業との間の人事交流に関する法律(通称:官民人事交流法)」もあるので、この制度を利用することもありえる。しかし、作中の礼一郎の転勤先、天の川町の役所は地方自治体だ。国から地方自治体への転勤は基本的にはない。そうでなくても公務員が「異勤願い」で、希望する場所にすんなりと転勤できるとは考えにくい。

 

 次に、礼一郎たちが引っ越した時期を考えてみよう。一般的に転勤は3月末、8月末頃が多いはずだ。ところが、さつきたちが天の川町に引っ越してきたのは10月末ぐらい。(『学怪』は10月22日から放送が始まり、作中の季節もそれに合わせている)もしかしたら、礼一郎だけ先に転勤していたとも考えたが、さつきたちの転入日と礼一郎の勤務初日が同じだと作中ではっきり言っているので、その可能性も無いだろう。

 

  とすれば、どうすれば東京から天の川町への転勤を作中の設定通りに成立させることが出来るのか。答えは簡単。そう、これが「転職」であったら全て可能なのだ。

 

 転職であれば自分が希望する場所に移り住むことができる。問題は、転職先が自分の職歴と合っているかだ。礼一郎のいる土木課は知識と資格が必要なので、前職もそれに関わるものだったと言うことは想像できるので、これはクリアできそうだ。

 さらに、中途半端な時期の転入だが、これも転職であれば簡単に説明がつく。思うに、礼一郎は中途採用で10月末に天の川町の役所に入ったと考えられる。天の川町は大規模な開発事業の真っ最中と言う設定がある。あの規模の町であれば、役所は人材不足に悩むだろうし、中途採用の募集を行っていたとも考えられる。もし、地元出身で土木関係の職務経験者が応募してきたらどうだろうか。役所としてもなんとか確保したいと思うはずだ。

 

 と言うことで、「礼一郎は天の川町役場へ転職し、10月末にこの町に移り住んだ。」とすれば、作中の設定とぴったりと合う。そう、これが現実的な引っ越し方法だ。

神山家と天の川町

 神山家は代々天の川町に住む一族である説。これは作中に出てくる描写を根拠に推測ができるので検証は難しくない。

 まず、神山家(または出身)の女性は先祖代々、逢魔(最終回に登場するオバケ)と対峙する運命にあると設定がある。そして、古い寺の墓地に神山家の墓がある。逢魔が封印されていた鐘もあったことから、神山家は自分たちの目の届く範囲で逢魔の封印を守っていたことも想像ができる。ちなみに、今のさつきの家であるあの立派な屋敷(広い土地)が、神山の本家ではなかろうか。

 この様に神山家は天の川町との関わりが深いことが描かれ、作品の重要な存在として設定されていることが分かる。

神山家は早世家系

 神山家は代々、早世の家系だろうという説。ご存知の通り、さつきの母・佳耶子は病気のため37歳という若さで逝去している。ただ、これを根拠に神山家が早世の家系と唱えるには理由が弱いので、いくつか根拠をあげていく。

 まず、さつきに近いところで、天の川小で校長をしていた祖母だが、彼女はすでに他界している。第1怪で、さつきが校長室にあった祖母の写真で初めて顔を見た様なリアクションをした(生前に会ったことがない)ところから、そう考えられる。さらに現在さつきたちが暮らす家は元々母の実家なのだが、最近まで空き家だったのだ。と言うことは、今は誰もいないということになる。

  そもそも、祖母が健在ならば、第1怪なり、第2怪なり、最初の頃に出てくるだろうし、あるいは、さつきがオバケについてどこかのタイミングで祖母に相談をしに行くだろう。現に、佳耶子は何度も母(祖母)に相談したとオバケ日記に書いている。それなのに出てこないのは、つまりはそう言うことだと考えるのが自然だ。

 そして、他の神山家の人間が出てこない不自然さもある。先の説でも書いたが、神山家は先祖代々天の川町で暮らしているようだ。佳耶子に兄弟や姉妹がいるような描写はないが、仮に彼女が一人っ子だったとしても、叔父や叔母、あるいは彼女のいとこなど親戚の誰かはいるはずだ。また、あれほどの敷地を持つ旧神山家をその親族の誰かが管理していてもおかしくない。しかし、作中に登場するさつきと血縁関係にある人物は、父方の祖父母と父方の親戚のみだ。

 強力な霊力を有する神山家が血縁者のさつきと関わらないのは、この一族が早世家系で既に大勢が他界しているからと考えた方が良さそうだ。まあ、誰かが健在なら、さつきに代わりオバケ退治をしてしまいそうなので、そうなるとこの物語が成立しなくなる。なので、意図的にさつきと関わらないよう設定がされているのだと信じよう。

佳耶子の匂い

 「あれ?ママ(佳耶子)の匂いがする」。これは、第13怪の終盤、敬一郎が発したセリフだ。過去から戻ってきたさつきに抱きついた敬一郎が、普段のさつきと違う匂いに気づいたシーンは印象的だった。なぜなら、幼い男の子が匂いで亡くなった母を思い出したわけだから。それほど印象的な「ママの匂い」とは一体何だったのか気になったのでその正体を考えていこう。

 

 最初は、この匂いが線香ではないかと考えた。線香はこの話の重要なアイテムであり、また、焚いていた描写もあった。であれば、線香を持っていた人の衣類にも匂いが移り、それに気づくのもわかる。しかし、線香はさつきがタイムスリップする前から焚かれていたし、そもそも宮ノ下家では普段から焚いているだろうから、さすがに敬一郎でも線香の匂いぐらいすぐわかるだろう。もし、敬一郎が「線香=ママの匂い」と認識しているのなら話は別だが、それはそれで可哀想過ぎるのでこの線はやめようと思った。

 

 次に、シャンプーや洗濯洗剤の線。たしかに劇中、佳耶子がさつきに触れたシーンは一瞬だがあった。しかし、服や髪の匂いを他人に移すには互いが相当密着していないと無理だと思うし、もしそうだとすれば、一緒に隠れていたハジメか桃子の匂いの方がついているはずなので、この線もないと言える。

 

 では、「ママの匂い」の正体は一体なんなのか。敬一郎が佳耶子を連想できるもので考えたらひとつだけ答えが見つかった。そう、これは、「水仙の香り」ではないだろうか。

 

 佳耶子は水仙が好きだという説明は、最終回に明かされるものだが、昔から好きだったという設定があってもおかしくない。また、花の香りなら変わることはないので、子供の頃と大人の佳耶子の匂いが同じでも何も不思議なことはない。むしろ、この事実があったから、シャンプーや洗剤の線が消えたと言える。思うに、入院中の佳耶子が病室に水仙を置いていたのだろう。そうすれば敬一郎もその匂い嗅いでいただろうし、母の近くから匂っていれば、これを「ママの匂い」として認識しているのも説明がつく。

 

 なお、水仙の開花時期は2月〜4月と言われている。ダヴィンチを霊眠したのは11月1日だったが、神山の家で水仙を育てていたとか、芳香を使っていたなどいくらでも説明できそうなので時期がずれていても問題ではない。

 

 というわけで、敬一郎が発した「ママの匂い」とは「水仙の香り」ということが言える。

宮ノ下家と渡辺家

 宮ノ下家と第17怪に出てきた渡辺家の関係性について。渡辺家は、里山という場所で40年以上旅館を営んでいる、宮ノ下家のずっと遠い親戚とのこと。しかし、この発言はあくまでさつき目線の話。たしかに両家は名字が違うし、お互い離れたところに住んでいるので、さつきにしてみれば遠い存在と思うのも無理もない。

 しかし、この話では、渡辺旅館がさつきたちに宿を無料で提供している。遠い親戚に対してこんな気前良いことをしてくれるだろうか。いや、ひとつだけあり得る。それは、さつきの祖母が渡辺家出身だったら可能だと言うことだ。

 根拠として、まずは旅館の女将さんの証言だ。その話によれば、さつきが赤ん坊の頃に会っているとのこと。という事は、父・礼一郎は、渡辺家の冠婚葬祭に赤子のさつきを連れて参列しているのだ。もし、礼一郎の母が渡辺旅館の先代の娘であれば納得もできる。

 また、宿を無料で提供してくれるほどの間柄であることも、両家の関係を解くヒントになっている。それは、宮ノ下家が今でも渡辺家と繋がっているということだ。もし、礼一郎が渡辺家の外孫で、今の渡辺旅館の旦那さんといとこ同士ならば、きっと今でも交流はあるだろうし、こんな話になるのもうなずける。

 つまり、宮ノ下家と渡辺家の関係が3代以内なら全て説明がつく。たしかに、3代も離れれば、さつきからみれば、遠い存在になるかもしれない。でも、実際は意外とそんなに遠くないのかもしれない。子供と大人の目線の世界は随分と違うことがよくわかる。

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